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2012年8月12日 (日)

1.障がい者が社会とつながる仕事 ②授産製品が売れない理由

「社会的弱者による製品づくりに学ぶ、世界でオンリーワンになるためのマーケティングと経営」
~弱みを強みに転じる生き残り方~

1.障がい者が社会とつながる仕事 


②授産製品が売れない理由
 
福祉のプロフェッショナルによるビジネスの限界


ちょっと手厳しいことを書いてしまいますが、お許しください。
一部の成功事例を除けば多くの場合、授産製品は売れていません。よって生産や販売で得られる障がい者の工賃は非常に安いという現状があります。その理由の一つとして、製品そのものの「市場競争力のなさ」にあります。

製品コンセプト、製品そのもの、価格、デザイン、販路、認知度・・・

授産施設を運営する社会福祉法人等の職員の方の多くは、実際のビジネスを経験してきた人というよりは、福祉の勉強をされてきた「福祉の専門家・福祉のプロフェッショナル」です。
自分自身が授産製品のマーケティング講座などでお会いして交流してきた職員の方々は、非常に優秀な方たちばかりで驚きます。こういってはなんですが、一般企業の社員の方よりもビジネスを本気で行ったら成功しそうな方もいます。しかし、今は生産活動を行って、収益事業を育てていく専門家ではありません。
   
一方で、ビジネスの最前線にいる企画や販売、プロモーションのプロフェッショナルが福祉業界で働くことは、そもそも仕事は少なく、多くないのが現状です。製品やサービスを開発して展開していくためのマーケッター、デザイナー、コピーライター、営業、PR担当なども含めた専門家は現場にいません。福祉の現場にビジネスのプロフェッショナルが「不在」なのです。
   
一般企業で働くことの難しい障害を持った方々の個性を活かしたビジネス構築は、一般ビジネスのプロフェッショナルにとっても難しい課題です。そういった難問に、福祉の現場の職員や保護者が取り組まなければならないという現状があります。

よって、職員やサポートする家族による企画開発や販売については限界があり、他にはない個性と付加価値、市場競争力をもつ製品がなかなか出来にくいということがあります。売れていない製品の多くは、「没個性」のどこにでもあるような製品になってしまっていることがあります。

独自展開と職員のモチベーション

また一部の施設に見られる現象ですが、他に力を借りず「わが道を行く」という姿勢もあります。リズムの違いや価値観の違いもありますが、ビジネスのプロである外部の会社や組織と組んでの展開を行わず、あくまで自力での製品企画や販売を貫く施設もあるわけです。
   
福祉の仕事を選んだ人の中で、「商業やビジネスを志向しないから」という理由の方の場合は、なかなかビジネス界とのつながりを持ちたがらないこともあります。しかし、自力のみで事業展開を推し進めようとすると、うまくいく確率は下がってしまいます。
  
また稀にですが、職員の方の授産製品事業に対する「モチベーション維持の問題」もあります。職員の方のお給料は、授産製品の収益に連動することは少なく、行政からの業務委託費や助成金などから出る公費として一定の金額となります。
   
よって、授産製品のビジネスが成功したらメンバー(障がい者・施設利用者)への工賃が増えますが職員自身のお給料は変わらない場合が多く、一般企業の社員のようなインセンティブはありません。

また多くの職員の方、施設を立ち上げ運営している親の方々はお給料などに関係なく高い志を持って取り組んでいますが、逆に事業に問題を起こしてしまったり失敗してしまったら組織内外での非難等もあり、なかなかモチベーションが維持できないという例もあります。
   
そして授産施設に通ってくる障がい者は、福祉サービス業者である施設にとってはある意味お客様です。メンバーが通うことで、その日数に応じてその事業所を運営し、職員の給与をまかなう売上が得られるのです。一般企業の同僚のように純粋に一緒に働く仲間ではないのです。

就労継続B型施設の中では、授産施設であっても工賃アップなどを目指さず仕事など困難を強いなくて楽しく過ごすことを目的にしている施設もありますし、仕事などで事故などを起こすよりは仕事はしないほうが良いという判断をする場合もあります。
   
こういった面が、組織全体で営利を追求する一般企業とは異なります。

しかし、今まで自分がお会いしてきた福祉施設で働く、障がい者の仕事づくりに携わっている職員の方々は、非常に志高く、情熱を持った人たちばかりです。

そういった方々が実力を発揮しやすい環境の中で必要な力をつけ、のびのびと働けるようになればと思います。
    
コストの高さ
  
また、授産製品の多くはコスト競争力がありません。調達する材料費をとっても、より安く調達している企業より競争力はないことは明確。そして今や、企業はグローバル化し、日本の製造業も生産コストの低減を求めて中国やアジアなどに生産拠点を移しています。
     
低いコストで大量生産される海外の商品に授産製品が低価格で対抗していくのは無理です。そのために「如何にして付加価値を高めた製品に仕立て、工賃が稼げる収益事業を福祉の現場で作り出すのか」という、普通のビジネス活動よりも難しい課題を、職員が考え出さなくてはならないという現実があります。

日本の流通の特徴

授産製品の販売チャネルの現状としては、概して多いのは、「バザー」、「行政機関での販売」、頑張っているところで「直営店の設置」、「ネット通販」も行っていますが、一般流通市場ではあまり目にすることはありません。理由としては生産量や品質が安定しない場合が多いため、または一般流通に営業アプローチを行っていないということも。

そして、授産製品の一般流通を阻む大きな問題があります。それは「日本の流通コストの高さ」です。日本の流通の特徴として、流通構造の多段階性と小売業の仕入れ価格の低さがあります。

最近は「SPA(製造小売業)」の興隆で卸売業は減少気味ですが、依然海外に比べて流通に介在する卸売業の数は多く、また小売業は非常に低い卸売価格をメーカーや卸売業に求めている現状があります。

雑貨製品を一般流通市場の小売店で販売してもらおうと思ったら、納入価格は小売価格の半額ぐらいでないとお店においていただけません。ある商材に関してある小売チェーンでは、製品の仕入れ価格は委託販売で店頭小売価格の約40%というところもあります。
   
よほど原価の安い製品なら別ですが、同じ製品を売っていただくのにその小売店に対して約60%の「手間賃」を払わないと売場に出ないということになり、コスト競争力の少ない授産製品はそもそも一般流通の土俵に乗れないということがあります。

これはもう授産製品だけでなく、多くの国産製品に当てはまるかもしれません。もうすでに一般流通チャネルにおける雑貨製品、アパレル製品などは、ほとんどが中国をはじめとした外国製となっています。

日本の地方部で作っている製品、昔からつくられてきた伝統工芸品、そして授産製品が、今の一般流通チャネルで展開するには非常に高いハードルと世界間競争があるのです。
      
立地の悪さ

また飲食や小売店などの直営店をもつ事業を行う際の立地ですが、福祉施設が事業を行う際、予算の少なさから空き店舗や普通のビジネスでは使われない不利な環境、一般ビジネスに難しい物件を優遇されて利用して開始する場合が多いです。

例えば、行政が管轄する施設の一角を喫茶スペースとして、運営を福祉施設に業務委託するパターンや、衰退した商店街の空き店舗を活用するなどです。賃料は安く、就労のチャンスを行政サイドは与えていますが、人通りが少なくて閑古鳥が鳴くお店になっていることも少ないケースではありません。立地がものをいうビジネスの場合、よく考えてから事業を行わないと成功確率が低い前提があります。
   
多くの人に知られていない

授産製品のプロモーションの現状としては、プレスリリースなどの各メディアへの発信を行っていない、その製品やサービスに新規性やオリジナリティ面白さがないために、取り上げられないということもあります。

また、地域バザー等での販売に限られているため告知は開催施設の掲示板などに限られ、伝播力の強い各種メディアに取り上げられることも少ない現状です。各施設のホームページの設置なども多くない状態です。

結果、その製品やサービスを知るのは、保護者や限られた人たちだけになり、ビジネスの結果としても限られてきてしまっています。

地方経済圏の衰退 企業のグローバリゼーションと障がい者

特に、製品というよりは軽作業などのサービスにいえることですが、昔は各地域にも障がい者が担う軽作業が今より多くあったといいます。昔の村などでのコミュニティにおいても、障害を持つ人であっても一定の仕事の分担があり、その中で何かしらの役割を与えられ、小さな経済圏の中で支えられていました。

しかし、製造業の海外流出や国際競争の中で、ものづくりの仕事の多くがなくなってしまいました。国内産業の空洞化で、地方に仕事がなくなり、その地域の経済圏が崩壊しバラバラになった現在、地域経済で障害者の仕事創出や雇用を支えられていない現状があります。

前述の就業年齢にある障がい者数の増加に対し、地域での仕事が逆に少なくなっていることが考えられます。
   
メンバーの働く能力

そもそもの話ですが、授産施設(特に就労移行支援施設・就労継続支援B型施設)に通う障がいを持つ方は、働くことが難しい面があります。体調のよいとき悪い時もあります。また、そもそも働けない状態にある方もあり、すべての方が働くために授産施設に通っているというわけでもありません。
 
家族の人にしてみれば、自宅にこもりっきりだったのが、外部の施設に通えるようになっただけでも素晴らしいことであり、さらに仕事をして賃金をもらうことなど夢のようだということもあります。

また、働く能力が高い方は、「一般就労」もしくは「就労継続A型施設での雇用」という道が見えてきます。それは、一般的な就職です。そこに本人にとって幸せな環境が全てあるかどうかはわかりませんが、仕事や給与という観点ではそちらの方がお給料も断然高いですし、収入も安定しています。
となると授産施設(B型施設)に通っているのは、働くことが難しい方が多いという現実があるということです。
    
そのメンバーで授産施設は、工賃という収入をあげるために、市場競争力ある製品やサービスを開発し、一般製品と同じ土俵で戦っていかなければならないという難題に挑んでいるのです。

  
つづく   ③へ

なかのひと
 
 
 


 

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