« 1.障がい者が社会とつながる仕事 ③授産施設は何を目標にするべきか | トップページ | 2.個性を活かすマーケティング入門 ①超シンプルなマーケティング戦略策定のフレームワーク »

2012年8月12日 (日)

1.障がい者が社会とつながる仕事 ④職場は「生きる場」

「社会的弱者による製品づくりに学ぶ、世界でオンリーワンになるためのマーケティングと経営」
~弱みを強みに転じる生き残り方~

1.障がい者が社会とつながる仕事


④職場は「生きる場」

地域で仕事が生まれ、生活していける未来

様々な難題や課題を抱える授産施設の製品やサービスについて、現状をほんの一部だけご紹介しました。これらは本当に一部で、各現場により様々な問題が存在しています。簡単にはいかないことが多いために、現状があることをご理解ください。
  
様々な難題があります。しかし、地域で「生きる場」をつくっていく必要があります。理想的なのはそれぞれの障がい者の住む各地域において、家から通える距離に、それぞれの人にあった仕事が存在し、もしくは家でも仕事が出来るような何らかの仕事が生まれ、その生活圏の中で自立生活していけることです。

やはり、心身に障害のある方が地元の学校を出た後、バスや電車を乗り継いで遠くの職場に通うのは難しいこと。通える範囲に仕事が出来ていけば素晴らしいことと思います。
   
地域に企業があり、そちらで障害者を雇用してくれるのも非常によいことですし、そちらでは働きにくい人は授産施設で仕事があり、どちらでもやりがいのある仕事と、自立生活していける賃金が得られることが理想です。
   
その「生きる場所」づくり、特に授産施設に必要な事業・仕事を模索していくために大切なことは、外部環境上の脅威や内部環境上の弱みはありますが、それらもひっくるめて個性・強みとなるような事業を行っていくアプローチです。

障がい者が活きる働く場

自分自身は福祉の現場のプロフェッショナルではないので、どのようにそれぞれ個性を持った障がい者が日々の個別作業をしていくかということは先人に学んでいこうと思いますが、様々に工夫された働く場を見る機会があります。

たとえば、誰でもできるように部品組み立てのための器具を専従技術者の方が開発し仕事ができる仕組みを作っている事業所、どのような作業をどのような順番で行うべきか絵や写真で細かく指示がプログラムされている事業所、障がいをもつメンバーが席に一列に座り作業をこなし職員が立ってその作業をサポートする事業所、それぞれの方の得意なことにより工程を分けて皆で分担して作る仕組みを作った事業所、などなど。

それぞれの持つ個性が最大限に活きるように、職員の方が試行錯誤しながら、各人の能力を伸ばしている現場があります。そこで働く人たちはとても生き生きと、自信をもって仕事に取り組んでいる姿を見ることができます。
   
成功のための方向性

授産施設の現場で重要なのは、それぞれの人ができること、得意なことを見つけて、その「個性に合わせた仕事」を作り出していくことです。通常のビジネスでも個性を活かしたマーケティングは重要ですが、福祉の現場ではさらにそのことが大切となってきます。
   
一般的にビジネスとして成功しそうといっても、自分たちでもできる身の丈にあった、それぞれの個性が生きることを行わないと実際は実現不可能なこともあり、無理が出てきてしまいます。どこかの施設の成功事例といっても全国の施設で同じような取り組みを行ってうまくいった例は少ないのが現状です。

企業の社会活動としての、一時的な授産製品の仕入れや軽作業の発注などもありますが、単なる企業の社会貢献アピールに止まらず、本来の社会貢献を考えるならば、できれば継続的な仕事となるようにしていかなくてはなりません。

小さく始めても事業が永く続くために、そのメンバーにしかできないこと、その地域でしかできないこと、簡単に他では真似されない「世界に一つの強い事業」としていくことが重要となります。そのためには、福祉の現場でマーケティング・ビジネスマインドを持ち、個別の問題を解決していくことが大切となります。


まずは「作って・売る事業」
   
経営的な視点でいえば、自分としては多くの授産施設の成功の方向性としては、「製造加工業」・「卸売・小売業」・「飲食店」の組み合わせが取り組みやすいと考えています。
    
一つの参考として授産施設による知的障がい者の従事職業のデータを見てみますと(精神障がい者のデータはなし)、製造加工業が最も多く15.7%、卸売・小売業で3.3%、飲食店で1.4%となっています。これらの事業は「作って」「売る」という親和性の高い事業です。この3つの事業の合計で20.4%と最も多くなります。個別の地域によりますが、これが取り組みやすい仕事なのではないかと仮説を立てています。
  
平成23年度版障害者白書  知的障がい者の職業別従事状況    
http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h23hakusho/zenbun/pdf/h1/2_06.pdf
      
施設によっては立地や働くメンバーの能力から農・林・漁業が適している、また国内製造業の衰退とともに増加傾向にある清掃、クリーニングなどのサービス業もよいと思います。
    
もし新しい事業を行う場合はじめは、一般就労(特例子会社も含む)や福祉工場での事業ではなく、より多くの地域の授産施設とそこで働く人にとっては、何かを「作って・売る事業」が取り組みやすいと感じています。
      
製品にもよりますが大きな設備投資が不要なこと、サービス業と違い体調や気分などで就労日数が不安定になっても製品在庫ができる製造・加工業であれば急なお休みに対してもリスクは少ない、物販業となるとネット販売も含めると商圏は広がり市場が大きく拡張性がある、製品の価格や利益率が作るものによって高く出来る、地域企業の下請け業務も安定性がありそうですが先方の都合で仕事がなくなる可能性がある、多くの消費者をターゲットにすることでリスクが分散できる、協力者が得られやすい、一方で清掃やクリーニングの作業が出来る人は企業やその特例子会社、福祉工場に就労できる可能性が高く授産施設に留まらない可能性もある、、などが考えられます。    
  
ただ、ものづくりということでは国際競争が激化しているので、海外製品では絶対できないような製品づくりを行っていく必要があります。

そして今までにない革新的なビジネスモデルも同時に考え、製品やサービスの販売だけでなく、取り組み自体が新しい価値を生むような事業にしていくことも重要です。
   
やるからには成果を

授産施設でも、困難はあっても、働いていく、そして出来れば経済的にも自立生活への道を歩む。仕事ごっこではつまらない。本当に取り組んでみると決めた以上は、結果を出して行きたいものです。
 
厳しい環境の中で一般企業と伍してのビジネスを展開し利益を出していくこと、小さい売上げからでも着実に利益を得ていくこと。それが一つの仕事を通して「生きること」、「自立への一歩」、「垣根のない世界」といえると思います。出来ないことは多いですが、しかし出来ることも多くあります。 
  
大きな海に漕ぎ出すとき、権利や義務と同じく、提供する製品やサービスも平等となります。障がいを持ちながら仕事を行うことは、それぞれの人によってはとても難しい挑戦です。しかし、それぞれの身の丈でベストを尽くしていけば、出来ないことは決してないと思います。
    
福祉の現場の職員にも求められるビジネス・マーケティングスキル

今まで述べたように、授産施設の生産現場においても収益活動がもとめられています。そういった意味で、福祉の現場で働く、福祉の専門家もある程度のマーケティングに関する知識、ビジネススキルを身につけておくことが大切です。
  
ある障がいを持つ人が、自身で働きたい意志を持ち、何らかの形で仕事をすることが可能で、実際に仕事をしたいと望む場合、本人はその挑戦に対して自覚を持ち立ち向かっていく必要があり、そして誰かがそれを支え、仕事をして収入を得ていくためのサポートをしていく必要があります。

そしてその挑戦を日々、近くでサポートしていく人が必要となってくるのです。授産施設とその職員は、取り組みに対してより効果的に結果が出るように導いていく力が求められます。授産施設で働く職員は、ある意味ビジネスのプロフェッショナルにならなくてはいけないのです。

実際に施設として、製品を企画する、デザインなどを行う、売り方を考える、材料を仕入れる、作り方を考える、作るサポートをする、宣伝する、実際に売る、または下請け作業を発注してくれる外部企業と折衝する・・などのビジネスを行う人は施設で働く職員となるのです。
   

しかし当然、自分自身がすべてのことは出来ません。他者の力を借りる場合は、ビジネスの仕事をしている人と、それぞれの得意なことを活かして結びつき、パートナーとなって製品やサービスを生み出し、収益を得ていくという取り組みも必要になります。
そのためにお互いが話が通じ合えるような「基本的なビジネス知識」の習得も大切です。

それぞれ、自分の得意なところに軸足を置きながら、共に一つの目標である収益事業を立ち上げていくための共有言語のようなものを身につけていく必要があります。

一般企業への就業経験がなく、現在そのような知識がないことに気後れすることはありません。自分自身も法学部を経て一般企業に就職し、営業職などを行っていましたが、経営やマーケティングの知識など皆無に近い状態でした。日々営利活動に従事していても、意外とそういった知識に接することは少ないのです。そのために多くの大手企業で働くビジネスパーソンが仕事をしながら経営修士(MBA)の学校に通ったりしているのです。
   
日々の仕事とは別の機会をつくって、勉強をし自分の仕事にあてはめながら学んでいく。机上の空論だけではなく、仕事で実践してみて身に着けていく。福祉の現場で日々仕事をしながら、これから徐々に学んでいけばよいのです。

今後、そういった福祉の現場で必要となるマーケティングの基礎知識を、通常ビジネスを行ってない人にも分かるように、わかりやすくご紹介していきたいと思います。


つづく
2.個性を活かすマーケティング入門 ①超シンプルなマーケティング戦略策定のフレームワーク

« 1.障がい者が社会とつながる仕事 ③授産施設は何を目標にするべきか | トップページ | 2.個性を活かすマーケティング入門 ①超シンプルなマーケティング戦略策定のフレームワーク »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 1.障がい者が社会とつながる仕事 ③授産施設は何を目標にするべきか | トップページ | 2.個性を活かすマーケティング入門 ①超シンプルなマーケティング戦略策定のフレームワーク »

無料ブログはココログ